そろそろ新作が発売されそうな山本幸久の本日のところ最新作がこれである。
ちょっと表紙のイラストがかわいすぎて、電車でこのまま読むのが憚られる。
読んでたけど。
これは高校1年の真弓子が、同じ放送部の大河原くんに思いを寄せるが、進展しないまま高校生活を終え、浪人2年目まで続く失恋状態を描いた物語である。真弓子はそんな胸の内やいろいろな思いについて、飼い犬のベンジャミンと「会話」するのだ。
しかもベンジャミンもそれに会話で応える(もちろんほんとにしゃべるわけではない)このやりとりがとてもいい。
なんと言っても、やっぱり会話だな。
全ての場面でこれが生きていて、しかもわざとらしく若者言葉に頼らずに、高校生はそれらしく描かれるところが素晴らしい。
今回の物語には、主人公の天敵ともいうべき、通称「ゲロサキ」こと藤枝美咲が登場する。
見栄っ張りでいやみないやなヤツなのだが、次第に真弓子も読者も、彼女が気になってくる。今度はどんなことをやらかすのかと。とんでもないことをしてもなんだか愛おしささえ沸いてくるから不思議。作者の思うつぼだと思うのだけど、全然いやじゃないので、どんどんツボに落として欲しいと思ってしまう。
最後はちょっとまとめそこなったというか、ベンジャミンの独白で終わるのが、ボクにはちょっと物足りなかったところではある。
けれども、いい話であることは間違いなく、泣き笑いできる小説。
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