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Wednesday, June 23, 2010

柚木麻子『終点のあの子』

本書が単行本1作目の新人作家である。
これがなかなか面白くて、高校生小説の佳作といっていいのではないでしょうか。

女子高生を書かせたら抜群にうまい豊島ミホが筆を折って田舎へ帰ってしまったので、この作家の登場はうれしい。
高校を舞台にした小説は、空間的には狭い範囲なのだけど、そこには30名もの人間が集まる場所であり、それだけ多彩なキャラクターを登場させることができるわけで、しかも子供と大人の間を揺れ動く、不安定な少年少女たち。ここにドラマチックで感動的な物語が生まれるのだと思う。
ボクが好きなのもそういうところ。

本書は4編の短編が収められているが、内容は全部つながっていて、語られる視点がかわっていく。
1話目の「フォーゲットミー、ノットブルー」が特に素晴らしい。
まじめグループに所属する希代子は、高校からこのお嬢様女子校へ入学してきた、不良ではないが自由にふるまう朱里に、すごく惹かれるようになる。一時は親友と呼べるぐらいの仲になるのだが、あることをきっかけに敬遠するようになり、さらにエスカレートしていじめに近い状態にまでなってしまう。この経過の心理描写がとてもうまい。おじさん(←ボクのこと)が読んでも、とてもよくわかる。希代子本人もやばいことはわかっているが、止められなくなる。そんな焦りや怒り、悲しみなどの複雑な感情がとてもよく描けている。そして、もうひとつ重要なのは、若い人の会話が、読んでいて恥ずかしくならないようにでもリアリティを持って
届くように書かれていること。ホント会話文は大切。それだけで、白けることがよくあるからな。

豊島ミホにも戻ってきてもらって、ぜひ2倍楽しませてほしいのだ。

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