2011年最初に読んだのは、この本。
面白かったですね。
シューマンを最高の作曲者であると賛美するピアニスト永嶺修人、この登場人物の口を借りて語られる作者のシューマン愛が、最初のうちはちょっと鼻につく。このまま最後までこの調子だとつらいなと(しかもボクの好きなグラン・グールドは嫌っているし)思いながらも読み勧めていく。しかし、なんだろう、だんだんと文章に惹きつけられていくのだ。文章そのものを読んでいるのが快感になってくるような、そんな感じ、それと平行してシューマンの音楽もすごく聞いてみたくなってきた(ボクは1枚もシューマンを演奏したCDを持っていない)
作家としての力と、シューマンへの愛情にボクが寄り切られたのだろうか。
物語は「私」が高校生の時に、同じ学校へ転校してきた永嶺修人と知り合いになる。そこに、もうひとりの友人を交えて、音楽やシューマン論を話したり、三人で会報を作ったりする日常が、「私」の手記という形で語られていく。
「私」が音大目指して浪人中に、母校の高校で殺人事件が起きる。その謎、その後突然登場する、永嶺の恋人気取りの不美人な女、などミステリー的要素が俄然満ちてくる。
最後まで読むと、かなりミステリーとしてもよくできているのがわかるが、それがおまけのように見えてしまうぐらい文章とシューマンに、気持ちは持っていかれてしまうのだ。
2011年、なかなか良いスタートをきれたので、このあとも楽しい本と出会えるといいな。
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